大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和55年(ラ)450号 決定

抗告人 小鷹徳次

同 小鷹正之

右代理人弁護士 前田政治

主文

一  原決定を取り消す。

本件競落はこれを許さない。

二  抗告人小鷹正之申立に係る抗告を却下する。

理由

一  抗告人小鷹徳次の申立に係る抗告の趣旨及び理由は、別紙「即時抗告の申立書」及び「抗告理由書」のとおりである。

本件記録によれば、本件競落不動産の実測面積は公簿面積の数倍あるのにかかわらず、その評価を命ぜられた天野秀一は三・三平方メートル当たりの単価に公簿面積を乗じて評価額一、一〇〇万円を算出し、これを評価額として原審に報告したこと(記録に編綴の天野秀一作成の不動産評価報告書参照)、本件競売期日の公告に記載され、かつ売却条件とされた最低競売価額はこれを一割減じた九九〇万円であったことが明らかであるところ、このように実測面積が公簿面積の数倍もあるのに公簿面積によって評価額を算出することは極めて不合理であり、その算出された評価額は不当に低廉であることは多言を要しないし、更に、本件記録によれば、本件競売事件においては競売期日の延期が重ねられ、本件競買申出がされた昭和五五年三月二四日の競売期日が最初の競売期日であって、競売法第三一条の準用する民事訴訟法第六七〇条により最低競売価額を低減すべき場合に該当せず、その他最低競売価額を定めるについてこれを評価額よりも低額とすべき理由はないことが認められるから、前記評価額から一割を減じた金額として定めた最低競売価額はいっそう不当に低廉なものといわなければならない。

してみると、本件最低競売価額の決定は不当であり、これを公告し、これを売却条件としてした本件競売につき競落を許可した原決定には、民事訴訟法第六七二条第三号第四号の理由が存在するので、競売法第三二条第二項、民事訴訟法第六八二条第三項、第六七四条により原決定を取り消し、競落を許さない旨の決定をすべきである。

二  競落許可決定につき即時抗告をすることができるのは、競売法第二七条第四項の利害関係人又は競売法第三二条第二項の準用する民事訴訟法第六八〇条第二項の競落人若しくは競買人に限られているところ、本件記録によれば、抗告人小鷹正之は右のいずれにも該当しない(右抗告人は本件競落許可に係る不動産の所有者ではない。)から、右抗告人からの本件抗告は抗告権を有しない者が提起した不適法なものとして却下すべきである。

三  よって、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 杉本良吉 裁判官 三好達 柴田保幸)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例